Sweet Lover

梨音が慌ててそう付け加える。
私は特に感情を害してもいなかったので、笑って
「分かってるわよ」
と、頷いてみせる。

「だから、それに反発して、なんとしてでも将来は一人で生きていける女になりたいわけ。
 それも、親に文句を言わせないような。しかも、須藤家とは関わりのないような。
 それで、国家公務員の道を考えた私は、今、外務省で働きたいな――なんて、思ってるんだよね」

最後は気恥ずかしくなったのか、声を潜めてそっと教えてくれた。

まるで、大切な宝物を誰にも内緒よ、と、教えてくれる子供のような笑みを浮かべて。

でも、その心意気は本物なのだろう。

先生がやってきて、いつものように朝のホームルームが始まった。

――私は……。

頭の中がぐるぐると回る、けれど。

何を目指すにしろ勉強はしなきゃ、と思って、今日は珍しく授業に集中することにした。