Sweet Lover

「そんな狭い世界に彼女を閉じ込めてどうすんの?
 真朝ちゃんはお前の玩具じゃねーぞ」

「だから、今まで待ったじゃない。
 本気で閉じ込めたかったら、3歳のときにあの二人の元から攫って、アメリカに連れてってたよ」

……響哉さん。
  それは、犯罪ですよ。

私がそう言葉にしようかどうか逡巡している間に、響哉さんは黒真珠を思わせる魅惑的な瞳で私を見つめ、

「マーサは何も心配しないで、俺と一緒に来ればいい」

と言うと、私の手にキスをして、車から降りていった。

「――塩撒(ま)きてぇ……」

髪を靡かせながら、キラキラしたオーラを振りまいて、颯爽と歩いていく響哉さんの後姿を私がうっとりと眺めていたら、冗談でもなさそうに佐伯先生はぼそりとそう呟いてから、車を発進させた。