Sweet Lover

「どうかした?」

私があまりにも黙り込んで彼に見蕩れているものだから、不審に思った響哉さんがこちらを見る。

うわぁあっ。

さっき、映画で見たのと同じ、王子様を髣髴とさせるような蕩けるほどの優しい眼差しで私を見るのは止めて下さいっ。

響哉さんは真っ赤になっている私の頬を撫でて、唇を緩ませる。

「キスシーンは、マーサの記憶にあったものと同じだった?」

私がこくりと頷くのを確かめてから、そっと、鼻先にキスをした。

「早く、キスが怖くなくなってくれると、嬉しいな――」

少し掠れた声が、甘く私を誘ってくる。

誤解が解けた今、もう、キスなんて怖くないけれど。

突然調子よくそんなことを言い出すのも、なんだか気恥ずかしくて私は、響哉さんから逃げるようにお風呂場に向かった。