Sweet Lover

幻想的な光の乱反射する映像と甘い音楽。

それは彼女の妄想なのか。
それとも、現実の出来事なのか。

総てが曖昧なままに、話は進む。

彼女目線で描かれるシーンに出てくる響哉さんは、どれもこれも王子様のように素敵に撮られていた。

一方、事実を調べようと奔走するシーンは、さながらドラマに出てくる人気若手刑事を思わせた。

別々の世界のように描かれている二つの世界はやがて巧みに絡み合い、彼女は徐々に、熱心に自分のために動いてくれた彼に心を奪われていく。


ああ、と、思った。
この、桜の花びらが舞い散る公園でのキスシーン。


私の記憶にある、二人の唯一のキスシーンは、「本物」じゃなかったんだ。
私の心の奥にずっと潜んでいたわだかまりが、ふわりと解けるのを感じた。