Sweet Lover

私は質問に答えない。
いっつもそうやって、逃げる響哉さんはズルいと思う。

視線を逸らさない私を見て、響哉さんは仕方が無いなと苦笑を漏らす。

「俺の贅沢を戒めたのは、昨日までで言えば朝香ちゃんが唯一の人。
 だから、マーサが同じように言ってきたのは、驚いたし内心嬉しかった。
 ……あ、だからって俺の浪費癖が簡単に治るなんて思わないほうがいいと思うけど」

響哉さんは贅沢病を治す気がない旨をさらりと挟み込む。

続けて、彼が整った浮かべたはにかむような笑顔に、私は心臓を鷲掴みにされたような心持ちになって、思わず息を呑んだ。

その表情はまるで、今から人生初告白をしようとする中学生みたいに初々しくて――。

いつも、どこか余裕を持って私を見ている響哉さんとは、まるで別人なんだもん。