言うや否や、響哉さんが携帯電話を取り出した。

「ダメダメっ」

私は慌てて電話を取り上げる。

「全部頼んでも、食べきれないじゃない」

「残せばいい」

至極当然の顔でそう言い放つ。

――そうか、この、贅沢思考って、響哉さんが生まれながらの大金持だからなのね。

私のために、服を一揃えしてみたり、いくつものマンションに同じような家具をそろえてみたり――。

「……駄目よ、もったいないから」

私がそう言うと、響哉さんは息を呑んで目を瞠(みは)る。

不自然なまでに、大仰(おおぎょう)に。

……そう、まるで霊でも見たかのように。