「ねぇ、マーサ。
 聞いてくれる?」

私はこくりと頷いた。

「実は俺、卒業して俳優目指してコネもなくアメリカに行くときに、将来を本気で心配してくれた二人に本当のことを話したんだ――」

突然の独白に、相槌さえも打つことが出来ない。

「こっちは友達を失うかもしれないっていう、決死の覚悟で告げたんだぜ?」

響哉さんが続ける。

「なのに、二人して『だから何?』って一笑に付して、それっきり」

くしゃりと、響哉さんは私の頭を撫でた。

「すげぇ奴らだろ?」

響哉さんは自慢でもするかのように言い放った。
私は頷く以外、何も出来ない。

少なくとも、響哉さんの人生では、二度とはお目にかかれないくらい『すげぇ奴ら』だったんだろうな、私の両親は。