「それに、学費を払ってるのは別に、マーサを束縛してやろうなんて思った結果じゃない。フィアンセだから払っているわけでもない。
 あれは、二人への供養と――。俺の精一杯の感謝の気持ち。
 俺の正体なんて知らないのに、普通に接してくれた初めての――」

そこで一度響哉さんは言葉を切って、ふっと目を細めた。

「親友だからな、真一と朝香さんは」

そう、独り言のように言った。

ううん、私に向けて何か言うときには、響哉さんはママのことを「朝香ちゃん」って呼ぶもの。

多分、本当に独り言なんだ。


もしくは、成仏した私の両親に向かって言ったのかも知れない。

響哉さんはしばらく、感慨深げな顔で、空(くう)を見つめたまましばらくの間、身じろぎ一つしなかった。