「でも――」

響哉さんは私の顎に手をかけて、上を向かせると色っぽいとしか形容できない表情をで、顔を近づけてくる。

「どうしても気になるって言うなら、カラダで返す――?」

低く艶めいた声が、私の身体を貫いていき、ゾクリとした電気に似た何かが身体の中を駆け巡る。

二の句がつけなくなった私に、響哉さんは相好を崩し、顔を放すとくしゃりと私の頭を撫でる。

「――冗談だよ。
 そんなケチな男じゃない。そんな安いお金でマーサが手に入るとも思ってないよ。
 お願いだから、気にしないで?」

――えっと。
  うちの学費って決して「安く」はないと思います、けど――。

響哉さんがあまりにも真剣に見つめてくるので、私は諦めてこくりと頷いた。