Sweet Lover

私はその言葉にものすごくびっくりした。

だって、響哉さんは。

私が気分が悪いから佐伯先生の腕の中に居るんだと信じて疑ってないんだもの――。

「少しは落ち着いた?」

先生の言葉に、頷くほか無い。

「動揺してるから、逃げ出さないように気をつけろよ」

先生はそう言うと、ゆっくり私から手を放す。

「……逃げ出すって、どういうこと?」

響哉さんは私を腕の中に捕まえたまま、先生に聞いた。

「……話してもいい?」

先生の問いに、私は視線を逸らしたまま頷くのが精一杯。

だって、本当は。
今も、私の胸はとっても痛いんだから。

響哉さんはこの腕の中にさっきまで、梨音を抱きしめていたんだもの――。