「……ちょっと、放してくださいっ」

「断る」

保健室のドアを閉めても尚、佐伯先生は私の手を放そうとしない。

「……どうしてよっ」

「どうしてって言われても。
 どうせあれだろ?
 響哉と磯部が親密にしているところを見ちゃったー、とか。
 そういう話だろう?」

さらりと言われて面食らう。
エスパーですか!この人はっ。

「どうして知ってるんですか。
 もしかして、響哉さんと梨音って付き合って――」

「……るわけないだろうが」

佐伯先生は呆れた口調で私の発言を遮った。

ううっ。
眼鏡の向こうの瞳が、いつにもましてとてつもなく冷たいんですけど。