俺の言葉に、安心したのか納得したのか。
はたまた、もっと別の感情からなのか。

梨音の双眸に溜まっていた涙が、緩やかに頬を伝って流れていく。

小さな子供を宥めるように、そっと梨音を抱き寄せる。

「今まで本当にありがとう。
 梨音ちゃんには感謝してる。
 だから、少しはお父さんの実力を信じてあげるといい」


「……分かりました」

ようやく腕の中で泣き止んだ梨音は、冷静な声でそう言った。

くしゃりともう一度頭を撫でてから、彼女から腕を放す。

「……子供扱いするの、いい加減やめて頂けません?」

その、上目遣いの拗ねた視線そのものが、もう、俺にとっては小さな子供のものでしかない。

梨音に向かって、苦笑しながら頷くのが精一杯だった。