「と、とにかく私の話はそれでおしまい。
 何かあったら須藤響哉に連絡するように、とも言われていたから――。
 でも、私が父を通じて連絡したのは、交通事故の話だけ、よ。
 他は特に――」

「そうなんだ。
 ごめんね、梨音。
 私のせいで」

よく考えたら、私が悪いのだ。
梨音に切ない顔をさせていること自体が申し訳ない気分になってくる。

二人して、湿っぽい顔で俯く始末。
今まで気づかなかった秒針の音が、耳についた。

「……私、そろそろ授業が始まるから、戻るね」

「うん、お弁当、持ってきてくれてありがとう、梨音」

「どういたしまして。お大事にね」

二人とも、目を合わせないままに、梨音は保健室から出て行った。