「とはいえ、次期ご当主様のご婚約者ともなれば――」

――な、に?
  次期ご当主って――?

私は話が飲み込めない。

「ああ、もう。
 兄貴、代わって」

先生はじれったくなったのか、お兄さんを差し置いて治療してくれた。

「いい?
 俺を信じてじっとしてればすぐに治るから。っていうか、兄貴彼女の頭抑えててよ」

……うわぁあ、そんな長い棒を鼻の奥に突っ込まないでください……っ

鼻の奥が焼け焦げるような匂いがして、実際すぐに治療は終わった。

「乱暴な弟で申し訳ありません」

それなのに、涼太先生は真剣に頭を下げている。

「はぁ?
 あのね、とりあえず止血が第一なの。貧血で倒れたらどうすんだよっ。
 どんだけ石頭なんだよ、兄貴は」