Sweet Lover

思わず目を瞠る私に、響哉さんが囁いた。

「マーサ、少し離れるけど必ず戻ってくるから。心配しないで待っていて」

私は僅かに頷いた。

「もう、全部吐ききった? 気分悪くない?」

頷くのを見届けてから、バケツを取り、代わりに濡れたタオルと脱脂綿を渡してくれる。

私はそれで顔と鼻血を拭いて、脱脂綿を鼻に詰めた。

響哉さんは私の頭をくしゃりと撫でると立ち上がる。

「大変お待たせしました。
 ひ孫誕生を渇望されているところ大変申し訳ありませんが、彼女はヴァージンです」

響哉さんは穏やかな口調できっぱりとそう言い切った。


……はい?
あの、確かにそれは事実ですけど、もう少しこう、オブラートに包んだ物言いはできないものかしら。