Sweet Lover

「須藤理事にもいち早く連絡していただいたようで」

……理事?
私を見つめている響哉さんは微笑を湛えたままで、特に表情に変化はない。

「来られてるんですか?」

……えっと。
  平田先生って40歳越えてますよね?
  何故に敬語?

「ええ、ものすごいスピードでいらっしゃいましたよ」

佐伯先生の丁寧な口調の中に、僅かに呆れたニュアンスが滲んだ。

響哉さんは組んでいた長い脚を解いくと、私の頭をくしゃりと撫でてからカーテンの向こうへと出ていった。



「平田、ありがとう」

それは、佐伯先生に向ける以上に、尊大な口調で私はびっくりした。

「いえ。その、理事の大切な方をこのような目にあわせてしまい本当に申し訳ありません」

平田先生はとても、恐縮した口調だ。口調の端々に緊張感が滲んでいる。