「そんなのっ。
 簡単に、信じられると思う? 私、響哉さんのこと何も知らないし……」

気づけば、自分の声じゃないみたいに震えていた。
これ以上喋っていると、感情が溢れて叫びそうになる。

私はドライヤーを置いて立ち上がった。
このまま、冷静に喋り続ける自信がなかった。

響哉さんの傍をすり抜けようとしたら、手を掴まれる。

「離してよっ」

キッと彼を睨んだのに、響哉さんは場違いな甘い笑みを崩さない。


酷い。
子供扱いしてるんだわっ。

「離してって言ってるでしょっ。怒るわよっ」

自分でも耳にしたことがないくらい、はっきりと、私の声は怒りの色を帯びていた。