『カレンは、知ってるんだろうな』

しぶしぶ、キスを諦めて靴を脱いでいる少女を見下ろしながら、響哉さんが問う。

口調が冷たいのは、英語を発音しているから、というわけではなさそうね。


……カレン。

いつか、深夜に響哉さんに電話をかけてきた女優の名前。

『お散歩に行ってくるって、ガードマンに言ったわ』

えへんと胸を張る彼女に、響哉さんは頭を抱える。

『見え透いた嘘をつくものじゃない。
 そんなこと言ったからって、ガードマンが君を一人にするはずがないじゃないか』

てへ、と。
少女は舌をぺろりと出した。