Sweet Lover

「頼太、消せよ。その続きは聞きたくない」

閉まっていたカーテンが開いて、響哉さんが顔を出した。

可愛らしい寝起きの顔になっているから、今まで本当に、寝ていたのだと思う。

テレビ画面で見ていた人が、急にそこに現れて、私の心臓は何故だかばくばくと大きな音を立てていた。

今、初めて逢ったわけでもないっていうのに。


「えー、これからが面白いのに」

冗談めかして佐伯先生が言う。

「どうせ、自分じゃ何も出来ない奴らが、好き勝手言ってんだろ。馬鹿馬鹿しい」

響哉さんが言い捨てる。

「へぇ。
 意外と打たれ弱いんですね。誰が何ていっても我が道を行くタイプなのかと思ってました」

刺々しい声を出したのは、梨音。
響哉さんは、ベッドから足を下ろし靴を履きながら苦笑を浮かべている。
会見と同じ、スーツパンツと、白いシャツ。


「大人になったら、そればっかりじゃ生きていけないんだよー、梨音ちゃん」

その口調は幼い子供を嗜めるようなもので、梨音は余計に頬を紅くして怒っている。