『恋人や奥様はいらっしゃるのですか?』

一瞬、響哉さんは難しい顔をして、唇を閉じた。

しばらくして、口許に甘いとしか形容できないような、ふわりとした笑いを浮かべる。
それは、よく、私に向かって見せてくれる笑顔でもあった。

そうして、真っ直ぐに、その黒曜石の輝きを帯びた瞳を前に向けて言い放つ。

『もちろん、私には大切な人が居ます。
 彼女に迷惑や危害を加えることだけは、おやめ下さい』


なぜかしら。
テレビを見ているだけなのに、耳まで紅く染まっちゃう。

……だって、それって、私のこと……だよね?

「時間ですので、すみません。本日はお忙しい中、ご足労頂き本当にありがとうございました。
 今後とも、キョーヤ・スドーをよろしくお願いいたします」

司会をしていた春花さんが、綺麗な声でそう告げた。

「ええ、ちょっと待ってくださいっ」

まだ、質問したりないとばかりに、色々なことを日本語、英語で聞いてくるレポーターたちに丁寧におじぎをすると、響哉さんは優美にその場を後にしていった。

場面が、スタジオへと切り替わる。