あっという間に放課後になる。

「真朝、一緒に帰ろう?」

「……ゴメンっ。
 私、保健室に行かなきゃいけないの」

誘ってきた梨音に謝る。

「えー?」

梨音はあからさまに不服そうな顔を見せた。

梨音は強引に保健室に向かう私についてくる。

保健室では、佐伯先生がコーヒーを飲みながらくつろいでいた。

「失礼します」

「いらっしゃい。
 おや、磯部さんもご一緒に?」

佐伯先生は、穏やかな口調でそう言った。

「はい。
 ご一緒させていただきました。噂のあの方にお目にかかれるかと思いまして」

「人気者だねぇ」

とげとげした梨音の言葉をさらりと流すと、カーテンが閉まっているベッドにちらりと目をやり苦笑してから、保健室の片隅にあるテレビのリモコンを押す。