「だぁったらいいけど」

梨音はぷくりと頬を膨らませている。

それから、また何に思いを馳せたのか、やや茶色いショートヘアをふわりと揺らしてにやりと笑った。

良くない悪意をふんだんに含んだ笑顔にも見える。

「ってことは、アイツ、お預け状態なんだっ」

うわぁ、極上の笑顔。

「ねぇ、梨音。
 どうして、彼のことそんなに敵対視してるわけ――?」

私の質問に、梨音が険しい視線を向ける。
朝から、百面相ね。

「アイツが私に喧嘩を売ってきたんだもんっ。
 ぜーったいに、一生、根にもつんだからーっ」

拳を握り締めて、仁王立ちしちゃったんですけど。

ね、梨音。
皆がこっちを見てるわよ?

……私の記憶からは綺麗に消えているけれど、昔よほどの何かが二人の間にあったみたいね……。