「そうなんですね」

「どうせアイツ、今日も迎えに来るって言ってんだろ?
 記者会見録画して、待っててやるよ」

車を降りる間際、先生がそう言ってくれた。
私はお礼を言って、車を降りた。



「おはよう、真朝。
 もう、大丈夫?」

先に教室についていた、梨音が心配そうに私のところに来てくれた。

「ありがとう。
 とりあえず、治ったみたい」

「良かったー。
 もしかして、あれ?
 今朝から世間を騒がせているアイツが、真朝に無理難題をふっかけてきてるんじゃないでしょうね?」

声を潜めてそこまで言ってから、あっと小さく声をあげる。

「ひょっとして、アイツ、真朝のこと、夜通し眠らせてないとか――」

い、いえいえ。
勝手に想像をめぐらせたあげく、握った拳をわなわなさせている梨音!

「ち、違うって、梨音。
 私とあの人、そういう関係じゃないから――」

慌てて、手を振って否定する。

「本当に?
 真朝、アイツに脅されてたりしないよね?」

梨音は疑り深い目で、私を見てくる。