「……下って?」

春花さんは、玄関前で待ってたよね?
ため息をつきながら、受話器を置いた響哉さんに聞いてみる。

「ああ、この建物、セキュリティがしっかりしていて、鍵がないとここまで上がってこれないようになってるんだ」

……それって。
春花さんが、特別だってこと?
だって、私、そんなの貰ってないし……。

私の顔色が変わったのを、響哉さんは見逃さなかった。

手を伸ばして、もう一度私をその胸の中に抱きしめる。

「本当は昨日渡したかったんだけど、バタバタしてて。
 春花には、俺が留守の間ここの管理をしてもらってただけだから。
 ……妬かないで」

甘く低い声は、弱い電流のように私の身体を痺れさせる。