Sweet Lover

あれは、まだ、幸せが日常だった頃。

それ以外の状態を、何も知らなかった頃。

『真朝ちゃんは、誰が好きなのかなー?』

その声は、多分パパのものだ。

『キョー兄ちゃんっ』

無邪気な舌足らずの声が響く。

『違うだろ~?
 真朝ちゃんが、大好きなのはパパとママ、ね?』

真顔で諭しているパパの隣で、ママはクッションを抱きしめて笑っている。

『そういうのって、押し付けるものじゃないわよ、真(しん)ちゃん』