Sweet Lover

「一番肝心なこと?」

私は首を傾げる。

「うん。
 隠していてもどうせバレるから、言っちゃうけど、須藤先輩ってアメリカでは相当、彼女をとっかえひっかえして遊んでたのよ。中には日本でも有名な主役級のハリウッド女優だっているわ。
 そのくらい、モテるし、女性づきあいに興味がないわけじゃないってこと」

あまりにもさらりと言われるので、私は二の句がつけなくなる。

あれだけかっこいいんだから、当たり前じゃんって思うべきなのか。

うわぁ、汚らわしいって感じるべきなのか。

最低ーって、吐き捨てるべきなのか。

すごいーって、感心するべきなのか。


その、どれもこれもが、同時に同じボリュームで私の中で鳴り響く。


春花さんは私の無言を、どう思ったのか。
変わらぬ口調で話を続ける。

「でも、大学時代はどっからどうみても、朝香先輩に夢中だったなー」

……ママに?

「聞いた噂では、想いを告げる直前に、妊娠を知ってしまって諦め切れなくてつきまとってるって……あ、これは言葉が良くないわね。
 親しくしているって言ってたんだけど」


ガタン、という音が。
自分がテーブルに突っ伏した音だということに気づくまでに、数秒の時間がかかった。