Sweet Lover

やれやれ、と。
春花さんは苦笑を浮かべた。

「そういうの、本命彼女の余裕って言うのよー。
 あまり見せ付けると、怒りを買うってこと覚えておきなさい」

ぴこり、と。
春花さんは私の額に軽いデコピンをくらわせてくる。

「な、何するんですかっ」

予期せぬ接触に、別に痛くはなかったけれど、思わず頬が赤らんだ。

「あっは。
 そういうのって、こう、構っちゃいたい気持ちをくすぐるのよねー。
 いいわぁ、ほぉんっと、腹が立つほど可愛らしいっ」

笑い声と怒りの声を、見事にコントラストさせながら、春花さんが言う。

「大学を出てからずっと、響哉さんのところで働いているんですか?」

「違うわ。
 とある商社で秘書をしてたの。そしたら、ある日電話がかかってきたのよね。
 須藤先輩から」

遠い日を懐かしむように、春花さんは瞳を細めた。