「俺の噂をしてくれてるんですよね…ありがとうございます。」
明らかに
怒った口調。
何気に
キヨの声質に似ているのはポイント高いんですけど…
もう遅いですよね…
あたし
完璧に頭の上にいる彼を怒らせてしまってますよね…。
「ご…ごめんなさい」
もう二度と噂などしませんから。
神様あたしを見離さないで。
どうか暖かいお慈悲を…
心の中で神頼み。
すると
彼の手があたしの左手をすくいあげる。
あたしを後ろから包み抱くようにして
彼の右手があたしの左手の薬指に
小さなダイアモンドの着いた細い指輪を
ゆっくりハメていく
向かいに座っていた田口先輩の頬が染まって行くのが視界にはいる。
あたしは
なにがなんだか分からなくて
だけど
胸が異常なほと高鳴って
されるがまま
指輪が
その場所に辿りつくのを
静かに見つめていた。


