郁生は一本の桜の木に辿り着いた。

「ここか…」

まだ意識も身体も完全ではなかったが、郁生はフラフラと桜の前に立った。


そこは。


図書館の窓から見える、立派な桜。

振り向けば、自分がいつも座っている椅子が見えた。

…僕は知らずにいつも。

メガネを直し、再び桜の方を見る。


「僕を呼んだのは…お前だろ?」

郁生は桜に問いかける。

しかしなんの変化も見られない。

「あんな映像(え)見せといて!! いい加減姿を現したらどうだ!? 律!!」


その瞬間。

木の幹がぼあんと、白く光った。