3人は、郁生の後を追う。

「郁!!」
「郁ー!!」

声を限りに叫んでも、郁生には届いていないようだった。

そして足もちぎれんばかりに走っているというのに、郁生に追いつかない。

「やだ、見失っちゃうよ!!」

郁生は最初のスピードよりもはるかに早く移動している。

「い、郁」

「郁、待ってよ。行かないでよ…」

3人の足はとうとう止まってしまった。

「…っくしょう」

(バンッ!!)

心は拳を壁にぶつけた。

早紀は足の力が入らないように、ガクガクとその場に座り込んだ。

「早紀、大丈夫?」
「………」
「…」

3人の中で、言葉はなかった。
何も話せなかった。