「前まではね、私に色々話してくれてたのよ。週に一回くらいは店に来てくれてたしね。
でも最近来てくれないの。圭吾くんがこっちに帰って来たくらいからかしら」

ダンディな容姿から放たれるオネエ言葉に最初は戸惑ったが、今はもう慣れた。

というか、あまり俺の前で千葉の話をしないでほしい。思い出すだけでイラつく。

「また何か企んでるんだろ」

「そうに違いないと思うわ。良からぬ何かをね。
だけど、だからこそ、圭吾くんに力を貸してほしいのよね」

「俺が?」

「私、ほのかちゃんを幼い頃から知ってるし、妹みたいなものだと思ってるの。
ほのかちゃんのそばにいたのは私。なのに、私はほのかちゃんを真っ当な人間に育てられなかったわ。
その責任は果たさなきゃ」

「……」

「圭吾くんがほのかちゃんのこと嫌ってるのは知ってるけど、こんな事頼めるの、圭吾くんくらいだし。
ただ、この店に連れて来てくれたらいいの。後は私が何とかするから」

「……何とかって?」

「何を企んでいるのか聞き出す。そしてそれが世間に顔向け出来ないようなものなら…ね?」

淡々と語るマスターの目に悪寒がした。