「嬢ちゃん」

岡村さんに呼ばれ、振り向く。いいところなのに。

「あんまこういう世界に入り込まねぇ方がいいぞ」

「……何のことでしょう?」

「刺激があって楽しいのは最初だけだ。
入り込めば底なし沼、ズルズル堕ちていく。もうカタギには戻れねえ。
お前はまだ戻れるだろ。今のうちに戻った方がいい」

岡村さんに諭され、笑ってしまった。
心配するように言うその口振りが、ヤクザには似合わない。