虹色の騎士団

オレ自身も、
ましてや兄貴ですら知らない『昔の言葉』を使った歌を歌い終えた時、

空から夜の虹が現れ、
オレ達の前に伸びてきた。

テレビで見たオーロラみたいに柔らかく輝く虹に入っていくと、
身体が浮かび上がるように感じる。

実際に足を使って歩くんじゃない。

こうすれば、
あっちの世界に勝手に運ばれる。

夜の虹は、
正確にいえば橋というよりは『転送装置』みたいな物だ。

フワフワした感覚が加速していき、
ちょっと気持ち悪くなった瞬間。

目の前から明るい光が消え失せ、

オレ達は『滅んだ世界』の、
崩れかけた舞殿に立っていた。

…こうして見るのは初めてだけど、ちゃんと覚えてる。

…ヒナタが好きだった場所だ…。

滅んだ世界は薄暗く汚れ、
呼吸をすると濁り湿った空気が肺の中に入ってきた。

「これが…凛達の居た世界……」

未来が、
初めて見る目の前の光景に唖然と呟く。

「酷い…。」

勇武は、
吐き気を堪えるように口元を片手で覆い、

「……生き物の気配がしない…。

木々も植物も…全てが死に絶えてる…。」

真宵は不快な表情で周りを見回している。

「皆、油断しないで下さい!!」

兄貴の言葉に、
オレは緊張して空を見上げた。

舞乙女の力を開放した今、
それを嗅ぎとって災厄は再び現れる。

…きっと直ぐに。