兄貴がベットのわきで、
オレの手を握ったまま

目を閉じている。


悪い夢でも見ているのか、
苦しそうに小さくうめき、
閉じられた瞳から

ぽろり……と一粒、
涙を流す。

「兄貴………?」

その涙を、左手で
そっと拭った時、

気が付いた。

兄貴の髪の色、

元に戻ってる…。

「日向君………。

まだ……そんな風に呼んでくれるんですか……?」

涙を拭った事で起こしてしまったらしい。

「すみません…。

僕は…そんな風に呼んでもらえる資格なんて………。」


「思い出したよ。オレ。

オレが、ヒナタだった頃の事。

あの綺麗な神殿で皆で暮らしていた日の事。」


そして、もう1つ。

習性される前の記憶…。

それは、小学校に上がる前のおぼろ気な記憶。

オレは、兄貴、凜、先生と暮らしてて…

覚えている3人の姿は…

17歳の凜。

21歳の兄貴。

23歳の先生。

そう。…今の3人の姿だった。

オレは3人に囲まれて幸せに暮らしていたんだ……。

オレが小学校に上がる時、3人はそれぞれの役割を果たす為、

ヒナタに分けられていた力を使って身体を若返らせて…。

オレの記憶を封印して、

…そして新しい生活を始めたんだ…。