『日向君…。』

オレは兄貴に抱き締められながら、

ワルツが流れる

大きなダンスホールで
くるくると踊っていた。

白いマントつきの
王子様みたいな格好の兄貴が、

オレの手を そっと握り、
オレの腰を柔らかく抱きかかえる。

『なあ、なんでオレ、
兄貴と踊ってんだ?』

『日向君が、
僕の大切な
お姫さまだからですよ』

『お姫さま…?』

いつの間にか、
オレは、ふわふわとした白いドレスを着ていて…。

兄貴が『お姫さま』ってゆーんなら、

きっと それでいいんだな。

オレを見つめる兄貴の顔が真剣になり、

すっ…と顔を近付けてくる。

ああ、オレ、
お姫さまだから
王子とキスするんだな…って思った時、

ふと、疑問が出てきた。

『でもさ、お姫さまって女だろ?』

『何を言ってるんですか?

日向君は、とても可愛らしい お姫さまですよ?』
そっか。

それならいいや。

オレの唇に、
兄貴が優しくキスを……。



「ちょっと待てーー!!!」

布団をガバッ!!!
っとはいで、

上半身を起き上がらせた。

あれ…………?

ここ、オレの部屋…?

「ゆ…夢だよな…」

そりゃそーだ。

いくらなんでも………。

頭を掻こうと右手を上げようとした時、

その右手が誰かに握られている事に気が付く。