「彼方…日向君……」
兄貴が廊下から入って来て、オレ達の前に膝を付く。
腕を広げて、
オレと彼方先生の頭を同時に優しく抱きしめる。
オレは直ぐに兄貴の腕から離れて立ち上がった。
今は、ここに居ちゃいけない。
そう思ったから…。
「……オレ、勇武にも謝らなきゃ……」
「そうですね…。」
廊下に出て、一回だけ振り返ると…
暗闇の中、兄貴に抱きしめられた先生の肩が震えているのが見えた…。
それきり前を向いて、早足で歩く。
勇武だけじゃない。
凛にも…未来にも謝らなきゃな…。
浮かんだ涙を拳で拭い、
オレはリビングに入って行った。