誰かの手がオレの腕を掴み、引き寄せられる。

「乙女…会いたかった………。」

抱きしめられ、頬っぺにキスされ…

オレは相手の顔を見ようとした。

だけど…
闇が顔を覆っていて、ちゃんと見えない……。

「乙女…捜して……。

…本当の私を……。」

本当の……?

「あなたを…守りたいんだ……。」

ぽたり…とオレの顔に雫が落ちてきた。

これは、涙…?

そう思った時、小さな泣き声が聞こえて来た。

振り向くと、
少し離れた場所にカイリが浮かんでいて、
1人で泣いてる。

「カイリ!!!」

男を振り切り、走っていってカイリを抱きしめた。

「おとーさん…」

「大丈夫だぞ…泣くな、カイリ!!」

男は黙ってオレ達の方を見つめ…

闇の中に溶けていく…。