彼方は、何とか顔を反らすと、自嘲的に小さく笑う。
「私を…癒したいだと…?
私の穢れを知らない
お前が…」
彼方が言い終わらない内に、
香澄は静かに語りだす。
「…貴方に、どんな過去や事情があったかは、
僕は知りません。
だけど、
何を見ても、何を知っても
…
貴方が自分を蔑んでるのと同じように
、
僕が彼方の事を穢れてるなんて思う事は
絶対に無いと、ハッキリ言い切れますよ。」
強く手を握り、曇りのない瞳で自分を見つめながら、
香澄がそう言いきった時…
彼方は温かい毛布で
包まれたように感じた。
幼い自分が望んだ、安らぎの夜を守ってくれる毛布に……。
ああ…。
そうか…。
この男は…
香澄ならば……
吐き出したかった私の穢れを
その華奢な指で…
その微笑みで受けてくれるのだろう…
何も求めず、
ただ私を…楽にする為だけに……