オレは いつだってマトモな世界で生きてきたつもりだ。


今現在は、
兄貴と2人暮らし。

有名進学校…とは いかなかったけど、

普通レベルの高校で、
それなりに楽しくやってるし。


部活は…中、高通して
先輩の強引な勧誘に負け、

オーケストラ部でトランペットを吹いている。


「文化部なんて、楽勝だろ…?」
なんて思ってたけど、

これが なかなかハードで……。



力強くて、良い音出す為には、
基礎体力に、腹筋。

毎日、グラウンド走ったり、呼吸のトレーニングしたり…。

下手な運動部よりも
ハードに汗かいてる事は確かかも。


まあ、楽器吹くのは単純に楽しいんだけどさ。

いや…話しがそれてるな………。


とにかく、普通の高校生として
それなりに充実した毎日を送っていた事は確かだ。


「日向(ひなた)君、
どうしました?」


オレの箸が止まってるのを見て心配そうな瞳で見つめながら、
兄貴が声をかけてきた。

「今夜のハンバーグは
あまり美味しくなかったでしょうか…?」

「いや旨いよ コレ。
オレ、肉好きじゃん?」

「良かったら、おかわりありますからね」

「ん、ありがと。」


オレの茶碗に
白米を盛り、嬉しそうに微笑んでる。


兄貴は
オレより4つ年上の21。

高校卒業してからは家にこもって、なにやらPC使って仕事してる。


夜野君のお兄さんなら、
いい大学に入れたはずなのに……。

オレは今でも、
兄貴の担任だった先生に
溜息まじりに語られる事も、しばしば。


そう、頭いいんだよな…。

その上、すんげぇ顔も良い。
性格も穏やかで、キレてる所なんか一度も見た事ない。

弟のオレが言うのもなんだけど……。


「しかし、兄貴の彼女は幸せだよなぁー…」

オレは、
炊きたての飯を
ふーふー冷ましながら、
しみじみと呟いた。


その途端、目の前で
みそ汁を飲んでいた兄貴が大きくむせこむ。

「ひひひ日向君!!
何を言って……!!!」


「だって兄貴、
高校時代、すっげぇモテてたんだろ?」