ココロノキズアト



はるきに抱かれていても
私の心は孤独だった。
前までは優しくしてくれてたのに
今じゃ憂さ晴らしみたいな抱き方。

(浮気相手と喧嘩したのかな……。)

はるきはさっさと終わらせると、
ゆっくり起き上がりタバコに火をつけた。
まるでおもちゃに飽きてそのまま投げ捨てるかのように。
私は服を着て壁にもたれかかった。

ただ一つだけ昔と変わらないものがある。
はるきの大きな背中。
たくましくて愛おしい背中。

抱きつきたい衝動に駆られて
気がつけば私は後ろからはるきの首に腕を回していた。
はるきの首筋からは女物の香水の匂い。

(私に会う前にあの子とあってたのか)

甘くて誘惑的な香りに私はだんだん腹が立ってきて、
嫉妬、焦燥感、怒りが入り混じって吐きそうになった。
このままはるきといても私は前のように満たされないし笑顔にはなれない。
幸せになれないの。


「……ねぇ、はるき。」


今にも泣きそうなのを必死にこらえた。
今泣いたら私の負けになっちゃうから。
はるきの思い通りになる。


「あ?」

「もう、別れよっか」

「何お前他の男でもできたわけ?」

「それははるきだよッ!!見たんだよ?この前はるきが他の女の子とキスしてたの…」

「……」


否定して欲しかった。
それは誤解だって、向こうからキスしてきたんだって。
でもはるきは何も言わずに俯いたんだ。


「もう終わりだよ……」


震える声で私はそう言い放つとカバンを持って部屋を出て行った。
この部屋でしたこと全ての記憶を置いて。