…雪が深々と降り続ける12月。

今年は暖冬だと各メディアで騒がれていたのに

「…ホント…異常だよな今年の冬は…」

足首が埋まる程の雪を踏みしめて少年は呟き続ける。

「母さんもこんな日はダンスなんて休ませてくれても良いのに…」

…っとひとりボヤキ続けても仕方がない…五年生の頃たまたまテレビで観たダンスに憧れて、勉強一筋のどこにでもいる教育ママを

「いい?…冬哉(とうや)。やるからには勉強も頑張らないとすぐに辞めさせますからね!」

っと散々言われてやっと説得したのだから…

実際には「まあ若いうちは色々やってみるべきだ」と説得してくれた父親のお陰でもあるが…

 そんな一年前の事を思い浮かべながら児童公園に差し掛かる。

この公園はダンス教室へ向かうのに近道なので冬哉は良く通り抜ける。

…だが夜は人通りが少なく昼間の賑やかさとはうって変わってうっすらと光る街灯だけが静かに降り続ける雪を照らし、まるで自分だけがこの世にひとりしか居ないと思わせる…

普段は小学生の冬哉にとって夜の薄暗い公園は恐怖の対象としか無いのでいつもだったら自転車で早々と通り抜けて行くのだが、さすがにこの雪では自転車だと危険を感じて歩いて向かうしか無かった。

…いつもと何ら変わりない公園がこの夜、ひとりの少年の未来を大きく変えようとしていた…