何を根拠にこんなことを思ったのか、自分でもわからない。
けど、彼女の音色を聞いて、そう思った。
しばらくの間、表情を隠している橘さんをじっと見つめていた。
「あのー…」
「っ…!」
そこで、神崎に話しかけられて目が覚めた。
「ど、どうした?」
「陸斗君がようやく立ち直ったので優里君とひなちゃんに話しかけようとしたのですが、ひなちゃんは顔を隠し、優里君が見つめていました…。いじめたんですか?」
ペラペラと話しだしたと思ったらそんなことだった。
「いじめてなんかねーよ…橘さん、大丈夫っすか?」
俺は橘さんの肩に触れてポンポンっと軽く手を弾ませてみた。
「…わりぃ、ちょっと抜ける。橘さん、そのままでいいから立てるっすか?」
「え、、ちょ、なに!?」
俺の発言にビックリしたのか、陸斗は目を見開いて慌てた。
橘さんは無言で立ち上がり、誰にも表情を見られないように、俺についてきた。
「ごめん、すぐに戻る」
そう二人に言い残して、俺と橘さんは教室を出ていった。


