『う〜ん、気持ちいい!』

「天気良くて、よかったな。」


二人海を見つめ
潮の香りを楽しみながら
おもいっきり伸びをする。

毎回辺りをぶらっとして
波打際ではしゃぎ
そして二人並んで座って
海を眺めていた。


いつも私が光輝の隣で
会社の事や友達の事など
くだらない話しをして
時間が過ぎていく。

今日は珍しく
光輝の方から口を開いた。


「花梨…って、オレの事について何も聞かないけど…いいの?」


光輝と生活を始めて
3ヶ月になる。
そんなことを言うのは
初めてだった。


『私は…光輝が話したくなったら話してくれればいいよ。』


「花梨は、オレのこと
知りたくない?」


『知りたいよ!でも…
無理には知りたくない。』


「一生話さないかもよ。」


『それでもいいよ…』


私は沈みかけの
太陽を見つめながら答えた。
地平線に向かって
沈んでいく茜色の太陽は
なんだか切なく見えた。

そんな私の横顔を
見つめながら
光輝は黙ったまま
私の肩を抱き寄せる。

いつもより
力強いその腕に抱かれ
私は涙が込み上げてきた。


このまま時間が
止まってしまえばいい…。

光輝の腕の中で
何度もそう願った。


       *