「ねえ、兄さん」


「……ん」


「なんだか今日おかしいよ?どうしたの?」


「……特に何も」


―――嘘だ。
いつもより確実に不機嫌な兄の声。


昔からずっと一緒に居るのだ。


少しの変化でもわかってしまう。


「…私、何かした?」


「…………。」


都合の悪いことを聞かれると黙ってしまう癖も変わらない。


私は大きく溜め息をつきながら、目の前で湯気をたてているスープをゆっくりと口に運ぶ。


元から、兄はあまり話すほうではない。


というより、口下手なのだ。


一度話さなくなってしまったら、もう放っておく以外に機嫌をなおす方法はない。



(何を言いたかったのかな)


その疑問は、
兄さんの機嫌がなおってから解決させることにしよう。


そう心に決めて、
私はスープをもう一口、口に運んだ。