「わ、悪いが近付かないでくれるか」

そう言って私から逃げるように顔を背ける兄は、耳まで赤くなっている。

「兄さん…?」


「………似…っ…いる」


「ん?ごめん、聞こえない」


「……なんでもな……いや、違う。…その、なんだ。お前の服…似合っ…」

「お嬢様!!!!!」


兄さんの言葉は、優の大きな声にかき消されてしまう。


「大丈夫ですかお嬢様!先程こちらで何かが割れたような音がしましたので心配で心配で…お怪我はありませんか?」


「あ…うん。私は大丈夫。兄さんは?」


「……ああ。俺も大丈夫だ」

若干落ち込んでいるように見えるのは気のせいだろうか。


「それは良かった……。あっ、お嬢様着てくださったんですね!!?わあああ感激です、よくお似合いですよ」


「あ、ありがとう…」


面と向かって褒められるのは、やはりすこし照れ臭い。


「あっ、その前に片付けでしたね。ここの掃除、しときますからお嬢様は先に朝食とっていてください」


「わかった、ありがとう」


「……すまん」


「いえ、これが仕事ですから」


そう言って笑う優は
いつもより少し大人びて見えた。