悪魔は、涙を持たない。 だから、そんな残酷な事実を知っても、おれは泣けない。 だけど。 ……泣きたかった。 どうしようもなくて、ただしゃがみこんだおれを、ふたりの天使はほっといてくれた。 おれは、持たない涙を流しているかのように、抑えられない嗚咽を時々漏らしながら、ただじっとしていた。 心のなかで、柚美の名前を呼びながら。 ずっとずっと呼びながら。