俺が服選びに時間をかけている九月下旬現在。

一階から俺を呼ぶ母さんの声が聞こえる。

「しょーちゃーん!」

俺は手に持っていたジーパンとチノパンを
放り投げ、一階へ走った。

どうやら奏士郎(そうしろう)から電話が入ってきたようだ。
数分前までLINEしてたんだからそっちでかけてくれば良かったのに…。
と、ため息をつきながら受話器を受け取った。

「早くしねーと置いてくぞーっ」

「お前がさそ…」

誘ってきたんだろ、と言いかけた時ヤツは
電話を切った。
やや冷えきったリビングに再びため息を残して二階へ戻った。

奏士郎からどこへ行くかも知らされていない俺はどういう服を着ていけばいいのか分からなかった。

適当にパーカーとウィンブレで合わせよ…

そして小さい斜めがけのバッグに財布を入れ、LINEで「今、家出る」と一言送信して家を出た。