里美さんの目から涙がポロリと零れた。 「お母さんっ!」 幸が里美さんに抱き着く。 「お母さんも、今乗り越えるから。乗り越えるけど、幸司さんの事忘れない。いつか、お父さんの事、笑って話せるようになろうね。幸」 「うん…うん!」 里美さんが幸の頭を撫でながら言う。 幸もまた涙を流しながら頷いた。 俺は、二人を捕らえていた過去から、二人が抜け出す瞬間を、ずっと見守っていた。