「俺は…何もしてないです。ホントは幸も、ずっと向き合おうとしてたんだと思います。苦しんで苦しんで、それで、苦しむ時間が長すぎて、出口が分からなくなっちゃったんだと思うんです」 里美さんはふっと笑った。 「それなら、晴斗君が幸をそこから連れ出してくれたのね。幸の心の叫びを私はずっと聞いてあげられなくて、気付いてあげられなくて、母親失格ね」 「そんな事ないよ…」 ふと、幸の声がした。 「幸…いつから…」 「今起きたの」