「飲み物持ってくるから、少し待っててね」 そう言って幸のお母さんは部屋から出て行った。 部屋に一人になり、急に静かになった気がする。 この家のどこかに、幸がいるんだよな。 昨日の幸を思い出そうとする。 けど、昔の幸の顔しか浮かんでこない。 長い黒髪は思い出せる。 丸い目も思い出せる。 病的な程白い肌も思い出せる。 けど、細部まで思い出そうとすると顔が浮かばない。 昔の幸の顔が浮かんでくるんだ。